529プランとは

NOVEMBER 24, 2013

アメリカで子供を育てる親にとって、将来の学費についてはいつか考えること。自分も子を持つ親として、リサーチするようになりました。今回はアメリカの学資貯蓄制度、529プラン(529 Plan)を紹介します。


日本では政府の制度としてはないのかもしれませんが、学資保険というものをよく聞きます。子供の将来の学費を賄う為に、今のうちから月々積み立てるものです。アメリカには同じような目的で公的な積み立て制度があります。それが529プランと呼ばれるものです。これは日本の学資保険とは違い、積み立て者が不慮の事故にあった時の保険になるようなものではなく、むしろ確定拠出型年金、401kに似ています。毎月積み立て、月々の利回りに課税されることはなく、将来子供の教育費の目的で使われれば、その引き出し金にも課税されないという、課税控除が大きなメリットの制度です。積立金は州ごとに運営されているファンドに預けるのですが、自分の住む州のファンドに入れば、州の所得控除を受けられるメリットもあります。


アメリカの大学費用事情

アメリカの大学費用は毎年、物価上昇率以上に上がり続けています。ここ10年の間に州立大学は2倍、私立大学は1.6倍、学費が上昇したそうです(野村資本市場研究所)。2013年次、州立大学(州内学生)の学費、生活費、教科書代、その他諸々の費用は年平均2万3千ドル(230万円)、私立大学に至っては4万5千ドル(450万円)と、四年間通えば単純にその4倍(それぞれ920万円、1800万円)かかる訳です(savingforcollege.com)。大学に進学させる子供が2人、3人いれば更に2倍、3倍、大学院まで行かせればそれに上乗せと、単純に見積もっても何千万とかかる訳です。家の子はまだ小さいので、自分の子供が進学する頃にはその費用も何倍になっているか計り知れません。


529プラン詳細

そんな膨大な費用を賄う家計を支える為に529プランはあります。プランの主な特徴は以下の通りです。

  • プランは州ごとに運営され、州内で公認されたいくつかのファンドがあります。全州がプランを現在提供中。
  • プランへの積立金は連邦政府の所得控除にはなりません。しかし州によっては州の所得控除を設けています。例えば自分の住むイリノイ州の場合、年間個人で1万ドル(100万円)、夫婦で2万ドル(200万円)まで所得から控除できます。イリノイ州の所得税率は一律で5%。仮に年間100万円積み立てすれば、毎年5万円税金を軽減できることになります。
  • ファンドの運用益は運用中は非課税。ファンドの引出し時も、使用目的が学資であればこの時も非課税。
  • 学資目的は制度によって指定された教育機関、教育費用に限られます。教育機関はほとんどのアメリカ大学と一部の海外の大学です。米教育省がリストを管轄しているそうです。
  • 学資の使用先はファンドのある州に限りません。つまりイリノイ州のファンドで積み立てても、他の州の大学へ行った子供の学資として使用できます。
  • ファンドは子供名義ですが、自分の子供である必要はありません。親戚や孫、夫や妻、さらには自分の為でも構いません。
  • 何らかの理由で口座名義の子供が学資を必要としない場合は、兄弟や親戚、他人向けに名義に変更することができます。
  • ファンドを口座名義の子供の学資以外の目的で引き出す場合は、所得税プラス10%のペナルティーを科されます。
  • プランには大きく分けて、前払い型と貯蓄型がありますが、現在は貯蓄型が主流です(90%以上)。ここでは前払い型については以降触れません。
  • プランにはいつでも加入が可能です。極端な話、子供が0歳でも17歳でもです。
  • 他の州へ引越した場合、行き先の州のファンドに組み替えることも可能です。そこで引き続きその州の税制優遇の恩恵を受けられます。


529プランの運用

529のファンドは州によって公認された会社が管理、運用を請け負っていることが多いです。アメリカでも有名な投信会社のバンガードやフィデリティー、オッペンハイマーなどです。運用のパッケージはファンドによって違いますが、多くは投資信託です。


運用形態は大きく二つに分かれます。直接型とアドバイザー型。直接型は投資する個人がファンドが提供する投資信託やマネーマーケットファンドを自分で選び運用決定します。アドバイザー型は投資アドバイザーに委託料を払い、投資アドバイスをもらったり、運用を完全委託するものです。401kをご存知の方には非常になじみのあるファンド形態です。子供が小さくまだ学資が当分必要ない時はハイリスクハイリターンで運用し、必要時期が近づくにつれてローリスクのものに運用先を替えていく戦略です。


留意点はいくつかあります。まず運用手数料。インデックスファンドなどは受動的に運用されているので比較的手数料が安いのですが、ファンドマネージャーが積極的に運用しているものは手数料も高めです。たとえ0.5%の違いでも、18年も運用すればそれだけで大きな違いになります。そして州のファンドによって手数料に大きな差があることです。ニューヨーク州やカリフォルニア州のように加入者が多い州はファンドも大きいので手数料を安く押さえられます。一方で人口の少ない州は、ファンド自体も小規模なものが多いので、必然的に手数料が高くなります。


もちろん普通の投資信託同様、利回り損失を出すこともあります。最悪な話、最終的な手取りが積立金以下になることもありえます。つまり401kと同じで、給付額は保証されていないのです。


529プランのメリット

プラン最大のメリットはやはり税金の控除でしょう。州の所得控除も大きいですが、それ以上に運用益の非課税が大きいと思います。積み立てを子供が小さい時から始めれば、20年近く運用し続ける訳です。それによる複利非課税は後々大きな運用差を生みます。


以下のチャートは課税資産と非課税資産の利回りを比較しています。仮に子供が0歳の時に1万ドル(100万円)積み立て、そのまま積立金をなしに18年間運用したとします。運用利回りは年平均5%。課税利回りはそれに対して28%の連邦所得税、5%のイリノイ州所得税を課します。すると18年後には6千ドル(60万円)ほど手取りに差ができます。33%近く違いがでる訳です。



もちろんこれに加え、毎月積み立てれば、毎年、州所得税の控除が受けられます。


529プランのデメリット

もちろんプランはいいこと尽くめではありません。例えば529プランからの学費支出は他の所得税控除を受けられません。例えば連邦所得税のホープクレジット(現在は名前が変更)などです。自分は大学時代所得がありましたが、ホープクレジットのお陰で実質所得税をほとんど払っていませんでした。結構大きい税免除でした。ただ学資を529プランからの引出金と自己の貯蓄の両方から支払えば、その分はクレジットを受けられます。なのでプランの資金と自己資金をミックスで学費を支払うのが得策です。


その他のデメリットは積立金の使用目的が限られていることです。どうしてもお金が必要になり積立てを崩さなければいけない時は、ペナルティーが発生します。また積立金が多すぎると過剰積立ての問題や、月々の生活を圧迫するかもしれません。かといって少なすぎれば税制優遇の恩恵をあまり受けられません。それぞれの家庭によってバランスが異なります。


そして日本人の家庭にとっては子供がそもそもアメリカの大学に行くかどうかということがあります。我が子はアメリカで生まれ、アメリカ国籍も持っていますが、長い先どうなっているかは正直分かりません。日本の大学へ行くとなればペナルティーが生じます。これはアメリカに住む外国人は誰しも同じリスクを抱えているのかもしれません。


ワシントン州やテキサス州、フロリダ州などの住民は州の所得税がないので、所得税控除の恩恵がありません。それもプランの魅力を薄れさせるでしょう。


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